
成瀬は天下を取りにいく
宮島未奈 2023年 新潮社
遅ればせながら読ませていただいた(2025年9月)。とにかく面白かった。主人公の魅力に打ち負かされた。
作者は滋賀県大津市在住。京大文学部卒。
6章からなり、第1章の「ありがとう西武大津店」が2021年に「女による女のためのR-18文学賞」を受賞。
2023年に第1章を含む「成瀬は天下を取りにいく」でデビュー。デビュー作が2024年本屋大賞を受賞。
成瀬あかりは、意志が強く、他人や世間の目を気にせず、自ら考え、自ら決めたことを貫く爽快・痛快な女性である。
自分がやると決めたことに努力を惜しまず、やりたいことをしっかりと実現させていく。かなり個性的な変人ではあるが、決して自分勝手では無く、他者への配慮や周囲の人への感謝を忘れない。だから好感が持てる。
あまりにも個性的であるがゆえに友達は少ないが、そんなことを気にもせずに、自分の道をひたすら突き進む。
しかし、なぜこのような大胆・勇敢・奔放な主人公が男性では無くて女性なのだろうか、という点が考えさせられる。主人公の性格や行動は、一般的な意味で男性的である。
それを女性にやらせることで、ものがたりの面白さが倍加するのかも知れない。
また、中年オヤジの私が感じているだけで、現代は女性でも人の目を気にしないで、変なこと(閉店するデパートに毎日通いテレビに映る、髪を坊主にする等)でも自分がやりたいことを貫く人が増えているのかも知れない。
自由奔放は男の特技と思っていたが、男もうかうかしていられない。

成瀬は信じた道をいく
宮島未奈 2024年 新潮社
「成瀬は天下を取りにいく」の続編。2冊合わせて100万部突破したそうだ。とても良く売れた本。続々編も刊行される予定だそうだ。
成瀬のような人格には「頭が良い」ことが不可欠と思う。大学入学共通テストでは高校で一番、京大理学部にストレートで合格、字がきれい、一度聞いた人の名前は忘れない、・・・。
もって生まれた才能が優れているので、他人と自分を比べない、だから人をうらやまない、自分を卑下しない。普通の凡人には難しいことだ。
しかし考えてみると、もって生まれた才能の優劣などに関係なく、他人と自分を比べない、人をうらやまない、自分を卑下しないで生きることができたら、爽快・愉快・幸せであろう。成瀬のものがたりの面白さはそこにある気がする。
自分が自分で考え、自分でやると決めて、早速自分で行動する。そのように生きることが「自由に生きる」ことであり、誰もがやりたく、しかしながらやることが難しいことなのだ。
それを成瀬がやって見せてくれる。だから、成瀬が好きになるし、読者も感化されて勇気を得る。
自分も天下を取りにいこう!
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