
福永武彦 新潮文庫 1972年
小説が発表されたのは1952年(昭和27年)。執筆が開始されたのは1941年であり、完成に10年かかった。福永の最初の長編小説で、文学的出発点といえる。
私は福永武彦の小説が好きで、若かりし頃たくさんの本を読んだ。65歳を過ぎてもう一度読み直したいという気持ちが起こり、最初に手にしたのは「風土」だった。
読後に調べたら、この本が彼の実質的な処女作だったと知り、まさに読み直しのスタートにふさわしいと思った。
読み終えて、登場人物の考えること、話すこと、動くこと、および自然や風景の描写がバランス良く、流れる様に進んでいくことが心地よかった。彼の小説の共通的なものとして、異性への愛(つながりたい気持ち)と、人間の孤独(つながれない寂しさ)の両方が描かれている。
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