
「タマル」は、クサガメの雌である。タマルと名付けた時には雌雄は分からなかったので、男の子のような名前になってしまった。しかし、大きくなって無精卵を産んだことから雌と分かった(一匹だけで飼っていたので、有精卵ができるわけは無い)。
タマルは、中国生まれ、中国育ちで、現在も中国で生きている。
タマルの生まれた日は不明である。なぜなら、私が中国の駐在員時代に、中国人の知り合いに頼まれてもらったからである。彼は自分では育てられないので、代わりに育てて欲しいと私にくれたのだ。
タマルが中国の我が家に来たのは2012年9月23日だった。行きつけのマッサージ店のなじみの店員が、亀を拾ってきて、店の水槽に入れていたが、店では飼えないことになり、私に育ててくれるように頼んだ。
そこで、我が家に引き取った。
写真のように体長はおよそ10cmであり、調べるとクサガメは半年で約10cmに成長すると書いてあったので、タマルの誕生日は2012年3月頃と推定された。


カメをどうやって飼えば良いのか、確信のある育て方は不明だった。そこで、水槽と観賞魚のための水の循環浄化装置を買い、タマルの家を作った。
餌はカメの餌を売っていたので、それを与えた。


「タマル」という名前には、それなりのエピソードがある。
私が中国の駐在員になる10年くらい前にさかのぼる。息子がまだ小学生の頃、地域のお祭りの縁日で、息子は小さな(5cmくらいの)クサガメを欲しがったので買ってきた。クサガメは、幼体をゼニガメというので、カメの名前を「ゼニガメ タマル」とした。家族の間では、略して「タマル」と呼んでいた。タマルは、数年で死んでしまった。
2012年に中国で図らずも2度目のカメの飼育をすることになった。同じクサガメだったので、名前を2代目「タマル」とした。中国のカメなので、日本名だけでは可哀そうと思い、中国名は「金 玉龍(ジン ユーロン)」と名付けた。
タマルは水陸両用で、ときどき狭い水槽から出してやると、部屋中を縦横無尽に歩き回った。
タマルを飼うまでのわたしは、カメは脳が小さいので、人になつくような生き物では無いと思っていた。しかし、それは誤解であった。わたしたちと目が合うと、タマルは水槽の中で元気にわたしたちに近づこうとした。それは、あたかも「餌ちょうだい!」とか、「頭をなでてちょうだい!」とか主張するかの様だった。
わたしたちがタマルに手を出しても、彼女は首をひっこめることは無く、嬉しそうに頭をなでさせた。



カメは冬眠をする。冬場はほとんど動かなくなった。



私は2015年3月に中国駐在が終わり、帰国することになった。
タマルを日本に連れて帰ることはできなかった。
そこで、中国の友人に飼うことをお願いし、快く引き受けてくれた。
一般的に「中国人は、椅子以外の四つ足はなんでも食べる」と言われ、実際にカメ料理店も巷にあった。私は友人に「タマルは福の神であり、あなたに財運をもたらすから、絶対に食べないように」と忠告した。
2025年の現在、友人はなおタマルを大切に育ててくれている。現在13歳だ。
TO BE CONTINUED